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病院と在宅の医療

こんにちは。

ケイ往診クリニックの医師 松原です。

今日は少し趣向を変えたお話をしてみようと思います。「病院と在宅の医療の違い」です。

当院は訪問診療、在宅医療を主として診療していますが、在宅医療が病院での既存の医療と根本的に異なることはなんでしょうか?

検査? 点滴? 手術?? もちろんこのあたりは病院と在宅で異なります。しかし、それ以上に根本的に異なることがあるのです。これは私が在宅医療を仙台で始めた際に最初に学んだことでもあります。

 

それはズバリ「ホストとゲストの関係」です。

普段元気な方が体調を崩したりして病院を受診する際の関係は、我々医療者がホスト(迎える側)であり、患者さんはゲスト(訪問者)になります。

では在宅医療では? これは全く逆の立場になります。在宅医療では我々医療者が生活の拠点であるお宅へお伺いするわけなので、我々医療者はホストからゲストとなるのです。

 

このことが患者さんにどういった関係があるのでしょうか?

私は患者さんの権利を守ることに繋がると思っています。患者さんには病院や医師を自由に選ぶ権利があります。このことはリスボン宣言に明記されており、患者さんが胸を張って主張していい権利です。

でも病院へ受けに行く医療だと、知らず知らずのうちに我々医療者に気を遣ってしまうことはありませんか?

例えば、「こんなことを聞いてみたいけど、もしくは方針が私が考えていることと違うけど、それをお願いして主治医の気を害したらどうしよう。そのことでぞんざいな扱いされて不利益を被るかもしれないのはいやだな」「めんどくさい患者と思われたらいやだな」といったことです。

本来であれば治療を選ぶ権利は患者にあり、方針が合わないと感じれば病院を医者を変えてもいいのです。でも「ゲスト」である患者さんや家族さんが「ホスト」である医療者に意見を言いにくい構図があるのかもしれません(特に日本の場合)。宛先の書かれていない紹介状を渡されて医療難民になってはどうしようといった不安もあるかもしれません。

 

では在宅医療ではどうでしょうか? 在宅医療の場合は患者さんや家族さんは「ホスト」であり、家の主です。気に食わない医療者が来た場合は胸を張って「NO」と言えばいいのです。家に上げるかどうかは患者さんとご家族の選択です。

我々は患者さんの権利を最大限尊重します。「NO」と言われないよう最大限の配慮をします。これも「寄り添う医療」の一つだと考えています。

ただ、いくら患者さんが「ホスト」だとしても、医療の正当性に反することはできません。その場合は我々は医療のプロフェッショナルとして「NO」と言わざるを得ないことがあります。どうかご理解ください。

 

本日は病院と在宅の医療の違いについて、思うところを話してみました。

逆に病院と在宅の医療で根本が同じこともあります。それは患者と医師の関係性です。

医師と患者さんを結ぶ関係は何でしょうか? これは実は一言で言えば「契約関係」です。我々医師と患者さんは、お互いの信頼の上に成り立つ契約の上に立ち、医療のプロフェッショナルとして知識と技術を提供しています。

この「契約関係」自体は病院での医療と在宅医療で全く変わりません。医療契約については機会があればまた触れてみたいと思います。

 

本日もありがとうございました。

少しでも在宅医療への理解に繋がればと思い、本ブログで情報発信をしています。本ブログを読まれて不快な思いをされる方がいらっしゃるかもしれませんが、どうかご容赦ください。

 

西宮市の訪問診療 ケイ往診クリニック

医師 松原 翔