2022年06月17日
こんにちは。ケイ往診クリニック医師の松原です。
長期に更新ができておらず申し訳ありません。徐々にブログを書く時間が無くなってきました。少しずつ地域の方々に受け入れていただいているのかなぁと、本当にありがたく思います。
昨日は副院長の森河が執筆させていただきました。各々の医師の考え方や人柄を少しでも知ってもらえたらという想いから、これからは院長の京本も巻き込んで医師3名で少しずつ更新していけたらなぁと考えています。これからもよろしくお願い致します。
さて、本日のテーマは表題の通り「覚悟のすすめ」です。「在宅医療と救急車②」は次回にさせてください。
「覚悟のすすめ」という本をご存知でしょうか?
ご存知の方はなかなかの阪神ファンだと推察できます。
そうです、鉄人金本知憲氏の著書ですね。ちなみに私は生まれつきの阪神ファンです(甲子園で育ってアンチ阪神になることはできませんね)。昔はナイターに行った帰り際に甲子園駅前にあった「おばちゃん」という店名の、本当におばちゃん達が数名でやっておられた居酒屋で父と中華そばを食べて帰るのがルーティンでした(勝った日限定)。
さて、「覚悟のすすめ」は15年ほど前に書店で見つけ、即購入して読み切った記憶が残る本です。かなり前に読んだ本ですので内容まで深く覚えていませんが、本書の中で一つ私の心に残っている言葉があります。
「覚悟が決まれば心はぶれない。」
今でも大切にしている言葉の一つで、本書の中では覚悟を決めることの大切さを説かれていたと思います。
なぜこのような話をするのか。それは在宅医療においても「覚悟を決めること」が大切になる状況が存在すると知ったからです。
仙台で在宅医療研修を始めてすぐの話ですが、このようなご家族が血相を変えてクリニックへ入ってこられました。
「父がとある癌で入院し治療していたが、状態が急変しいつ息を引き取ってもおかしくないといわれた。今は兄が付き添っているが、もはや意識もない。父は延命治療は希望しない、最期は自宅で過ごしたいと常々言っていました。何とか父の希望をかなえてあげたい、父を家へ連れて帰れませんか?」と。
急性期病院の考え方が抜けきっていなかった私は「どこでお亡くなりになってしまうかわからない。残念だが無理だ。」と直感的に思っていました。
しかし、当時研修していたクリニックの院長先生は穏やかに笑顔で「大丈夫ですよ、お父さんを家へ連れて帰りましょう」と御家族におっしゃったのです。
横で思わず「ええっ」と思いましたが、院長は続けます。
「ただし、現在の状態であれば病院のベッドを出た瞬間からいつ呼吸や心臓が止まってもおかしくない。それは病院のエレベーターの中かもしれないし、介護タクシーの中かもしれない。家に帰る道中のどこで呼吸が止まっても脈が止まっても慌てることなく、何食わぬ顔をして家まで連れて帰ることができますか?
人は例え脈がなくとも呼吸がなくとも、医師の診断を受けるまでは亡くなっていません。道中のどこで何があっても、必ず家に帰って落ち着いてから死亡診断をすると約束できますか? こじつけかもしれませんが、そうすればお父さんの希望を叶えることができます。最期を家で過ごすことができます。」と
お父さんの希望を叶えるために何よりも必要なのは、何があっても何食わぬ顔をして家まで送るというご家族の覚悟だ、とおっしゃっていました。
それまでの私の中にはなかった考え方で、その言葉を聞いたときに金本氏の言葉が脳裏に浮かび感動したことを覚えています。
当院で必ずしも同じ事ができるとは限りませんが、この考え方や想いを忘れないように、私の力の及ぶ範囲でこの地域に貢献出来たらと思っています。
これからもよろしくお願いいたします。
西宮市の訪問診療、在宅医療、往診
ケイ往診クリニック 医師
松原 翔
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