2022年05月10日
こんにちは。
久しぶりの更新となります。
本日のテーマは「在宅療養中に状態が急変したら・・」です。よろしくお願いします。
在宅療養は病院と違い医療者が常に横にいるわけではありません。そんな中、家で療養するのは大きな不安がつきまとうと思います。
「私の身体に、もしくは大切なご家族の身体に何かあったときにはどうしたらいい? 私はなにもわからないのに。」という不安は在宅療養をされる方、支える方全員が持たれる不安だと思います。
では実際に自分たちの手に負えない事態が生じた際はどうしたらよいのでしょうか?
そんな時、在宅療養をされている皆さんには選択肢があります。
①救急車を呼ぶ
②訪問看護師、在宅主治医に連絡する
です。
それぞれについて起こりうる自体を少し掘り下げてみます。
①救急車を呼ぶ
日本には極めて優れた救急医療のシステムがあり、多くの場合救急要請から数分で要請場所まで救急隊員が救急車と共に駆けつけてくれ、必要な応急処置を受けられます。驚くべきことにこの極めて優れた救急搬送システムは日本では無料で提供されています。
この「救急車」ですが、在宅療養中の患者さんにとっても大変心強いサポーターです。我々ケイ往診クリニックでも電話での症状聞き取りや往診の結果、救急車を要請することはあります。
では、何かあったとき全てのケースで救急要請が望ましいのでしょうか?
実は一概に「はい」とは言えないのです。
救急車を呼ぶ時の皆さんの心の声は何と言っているでしょうか? きっとこう言っていると思います。
「助けて!」もしくは「何とかして!」
こういった声に基づく要請を受けた救急隊員は全力で「助け」に来てくれるのです。
では、救急車で病院へ運ばれた転帰はどうなるでしょうか? 実は転帰は3個しかありません。
1)完全に元の状態まで回復する
2)治療の甲斐なく病院でお看取りになる
3)障害を負って(元の状態にまで戻らず)退院する
です。
多くの人は「(1)完全に元の状態にまで回復する」ことを願って救急要請をするでしょう。その結果が臨んだとおりであれば最も良い結果です。
(2)の結果も、残念な結果ですがやむを得ないことも多く「出来るだけのことをして無理だったんだ」と納得もしやすいかもしれません。
でも実は多くの人が救急要請をする際に想定しておらず、実際に陥って困ることになるのが「(3)障害を負って(元の状態にまで戻らず)退院する」です。生命は助かったけれど意識が戻らず寝たきり、入院中に筋力低下が進み寝たきり、呼吸が弱いから気管挿管や人工呼吸、、などです。
最近は急性期病院でも意思確認をしっかり行いますから希望しない処置をされることは減っていますが、意思確認できない状況だとそうもいきません。救急隊や救命医は全力で「生命を助けるための」医療を行います。
想定していなかった(3)の状態になった時、搬送された急性期病院がずっと入院させてはくれることはあり得ません。病状が安定したところで他の病院に移るか(病床に空きがあれば、です。日本ではこの区分の病床が今後減っていきます)在宅療養に戻ることになるのです。
(1)(2)(3)どの結果になったとしても受け入れる覚悟があれば救急車は非常に有力な選択肢です。
救急車を呼ぶ時にもう一つ注意しておかなければならないことがあります。それは救急隊の応急処置です。
例えば「がんの終末期で最期を家で穏やかに過ごしたい。蘇生処置を希望しない」方が在宅療養中に不測の事態が生じ、救急隊を呼んだとします。
その際の救急隊の行動原理は「生命を助ける」です。本人や家族の意思と無関係に処置が始まってしまう可能性があるのです。
全国で「救急隊の蘇生や搬送中止」はかかりつけ医の指示の下で容認される傾向にありますが、判断は各消防本部に委ねられています。つまり、蘇生や搬送中止を望んでもそうならない可能性があることには十分な注意が必要です(少なくとも私がこれまで医療を行っていた地域では救急隊の蘇生や搬送中止は認められていませんでした)。
いかがでしたでしょうか。119番に掛けるだけで救急車は来てくれますが、起こりうる結果を知った上で判断に繋げる必要があります。
次回では、②訪問看護、在宅医に連絡する
について掘り下げたいと思います。
本日もありがとうございました。
少しでも在宅医療への理解に繋がればと思い、本ブログで情報発信をしています。本ブログを読まれて不快な思いをされる方がいらっしゃるかもしれませんが、どうかご容赦ください。
西宮市の訪問診療、在宅医療
ケイ往診クリニック
松原 翔
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